キリストの体
大聖堂の床は十字架の形になっています。
十字架ということは、つまり人間の形でもあります。
教会はイエスを中心にしたひとつの神秘体だとする考え方に形を与えているのです。
イエスの頭に当たる部分を内陣といいまして、ここは主祭壇、それから脇祭壇があり
ます。
シャルトルの場合は一つの主祭壇と五つの脇祭壇があります。
つまりミサを五ヶ所でであげられるのです。
信者はこの内陣に向かって礼拝の形をとりますから、その方向線は遠く十字架の地
エルサレムに向かっているということになります。
シャルトルの場合は正確に春分と秋分の太陽ののぼる方向だそうです。
東がイエスの頭を示し、両手を示す部分が南口と北口に当たるわけです。
足に当たる部分が西口になります。
当時人々は磁石を持たなかったでしょうから、聖堂が正確方向を指し示すことには意
味がありました。
日の当たりぐあいで日時計の役割も果たしたでしょう。
それに鐘楼から祈りの時を告げる鐘が響いて、これも時の感覚を民衆に習慣づけた
でしょう。ボース平原の場合には、多くの民衆は牧者、農民です。
あるいはそれと関連した仕事をしています。
彼らにも一日の時の刻みを知る必要があったし、季節を知る必要もありました。
このように聖堂は暦に関する認識を与えるという実用性もあったのです。
小川国夫「祈りの大聖堂シャルトル」P30 1986年講談社刊