KATZのFLEURCAFE

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カテゴリ: 小川国夫

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   キリストの体

 大聖堂の床は十字架の形になっています。
 十字架ということは、つまり人間の形でもあります。
 教会はイエスを中心にしたひとつの神秘体だとする考え方に形を与えているのです。
 イエスの頭に当たる部分を内陣といいまして、ここは主祭壇、それから脇祭壇があり
 ます。

 シャルトルの場合は一つの主祭壇と五つの脇祭壇があります。
 つまりミサを五ヶ所でであげられるのです。
 信者はこの内陣に向かって礼拝の形をとりますから、その方向線は遠く十字架の地
 エルサレムに向かっているということになります。

 シャルトルの場合は正確に春分と秋分の太陽ののぼる方向だそうです。
 東がイエスの頭を示し、両手を示す部分が南口と北口に当たるわけです。
 足に当たる部分が西口になります。

 当時人々は磁石を持たなかったでしょうから、聖堂が正確方向を指し示すことには意
   味がありました。
 日の当たりぐあいで日時計の役割も果たしたでしょう。
 それに鐘楼から祈りの時を告げる鐘が響いて、これも時の感覚を民衆に習慣づけた
  でしょう。ボース平原の場合には、多くの民衆は牧者、農民です。
 あるいはそれと関連した仕事をしています。
 彼らにも一日の時の刻みを知る必要があったし、季節を知る必要もありました。
 このように聖堂は暦に関する認識を与えるという実用性もあったのです。


   小川国夫「祈りの大聖堂シャルトル」P30 1986年講談社刊
  




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    正面に立ってー誰の像か

 正面入口は西です。
 幸いに、四代目のシャルトル大聖堂の一部がここに残っております。
 四代目は一〇ニ〇年から一〇三七年の十七年間にわたって造ら
 れた建物だといわれています。

 多くの聖堂の例にもれず、ここにも中央の欄間 には最後の審判の
 キリストが描かれておりますけれども、審判官キリストは、ロマネスク
 の教会にあるように恐ろしい姿をしておりません。
 威厳を具えながらも、柔和な感じがいたします。

 キリストの周りには四頭の不思議な動物が描かれていますが、これは
 四人の福音記者、マテオ、マルコ、ルカ、ヨハネを表しているのです。
 このことから、シャルトルの大聖堂は本来新約聖書を主体として統一
 しようとしたものだと評している人もいます。 


     小川国夫 「祈りの大聖堂シャルトル」P20 1986年講談社刊

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    北口に立ってー聖母戴冠

 シャルトル教会は<ノートル・ダム・ド・シャルトル>ですから、われらの聖母教会

 ということになります。

 その主題をもっともはっきり打ち出しているのが北口です。

 ここにはキリストによる聖母戴冠の主題が描かれています。

 しかもその古い形ではないかと 思います。

 なぜかといいますと、北口もまた相当に古いものでして、一ニ〇五年から三〇年の

 間にできたと言われていますから、さっそくに、当時はまだ新しい聖母戴冠のイメ

 ージ をここに取り入れたのだと思います。


 聖母に対する信仰が中世も時を経るに従って深くなっていくわけですけれど、これは

 われわれが聖書を読んだ場合には不思議な気がいたします。

 なぜかといいますと、聖書の中には聖母マリアに関する記述は数行あるだけだから

 です。印象的な断片ですけれども、数行あるだけです。

 ですから、公認の聖書の考え方だけでは足りなくて、聖母に関する伝承が教会に

 よって受け入れられていったのです。


   小川国夫「祈りの大聖堂シャルトル」 P34 1986年講談社刊
   菅井日人写真 

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   シャルトルの青

 シャルトルのステンドグラスの主調は青です。

 独特な青でして、<シャルトルの青> と名付けられています。

 私はシャルトルの町でいまもステンドグラスを作っている職人、

 芸術家にに聞いてみたのですが、あの青の効果は、どうして

 出てくるのか、わからないと言っておりました。

 中世の職人たちは、秘法を持っていたのです。

 それは、必ずしも高度のものではないでしょうが、さまざまな

 混ぜ物があって、記録にも残っていないし、わからなくなって

 いるということです。

 
 それから幾代もの埃がいっぱい付いているのです。

 埃が石の縁から、あるいは窓に無数に走っている鉛縁のあたり

 からガラスを浸して、透明感を遮り、人工を超えた光の質を生むの

 です。凹凸のせいで起こる乱反射の光のきらめきにとなります。

 そういう、むしろ欠点とみられることもまたすばらしい効果となって

 いるのです。


  小川国夫「祈りの大聖堂シャルトル」P56 1986年講談社刊
  菅井日人写真 

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                       日時計を持つ天使

   シャルトル小史

  この地は、キリスト教以前の宗教、ドルイド教という、森の中に精霊がいると

  考える、自然信仰の霊地だったそうで、ここには大地とか森とかいう母性的な

  ものを慕う気持ちがすでにあったのです。

  そういう事情がのちのマリア信仰にかかわって行ったと思われます。


  ドルイド教の祠の上にキリスト教会が建てられました。

  十二使徒時代といいますから、すでに一世紀に建てられているのです。


   小川国夫「祈りの大聖堂シャルトル」 P8 1986年講談社刊

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